スキマバイトの労災保険事情について徹底解説
25.07.30

スキマバイトは短時間で手軽に働けることから、多くの人にとって魅力的な選択肢となっています。しかし、仕事中にケガをした場合の補償について不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、スキマバイトにおける労災保険の適用条件や手続きについて詳しく解説します。
そもそも労災保険とは?
労災保険(労働者災害補償保険)とは、仕事中や通勤中に発生したケガや病気、障害、死亡に対して補償を行う公的な保険制度です。事業主側に加入が義務付けられており、労働者側の保険料負担はありません。
労災保険の補償内容は以下の通りです。
- 療養補償給付:業務中のケガや病気に対する治療費の全額補償
- 休業補償給付:療養のために休業する場合、給付基礎日額の60%を支給
- 障害補償給付:仕事が原因で障害が残った場合の補償
- 遺族補償給付:労働災害で死亡した場合に遺族へ支給
- 通勤災害補償:通勤途中での事故やケガにも適用
一般的に、正社員や契約社員だけでなく、派遣社員やパート・アルバイトも労災保険の対象となりますが、スキマバイトの場合はどのように適用されるのでしょうか。
労災保険の適用条件とスキマバイトへの適用
スキマバイトにおいて労災保険が適用されるかどうかは、以下の条件を満たしているかによります。
- 雇用関係の有無
労災保険は雇用関係にある労働者が対象です。スキマバイトの形態によっては、雇用契約が結ばれておらず、個人事業主扱いとなる場合があります。
この場合は、労災保険の適用対象外となります。 - 業務遂行性
労働者が事業主の指示のもとで業務を行っている場合、その仕事中に発生したケガや病気は「業務上の災害」とみなされ、労災保険の対象となります。 - 通勤災害の適用
通勤途中の事故やケガについても、労災保険の適用対象となる場合があります。ただし、寄り道や個人的な用事を挟んだ場合は適用外となるケースもゼロではありません。
スキマバイトの場合の注意点
- スキマバイトを提供するプラットフォーム経由で働く場合、雇用契約がないケースも多いため、労災保険の適用外となる可能性があります。
- 雇用契約があるスキマバイト(派遣型や短期アルバイト)は、原則として労災保険の対象となります。
スキマバイトで労働保険が適応される事例
先述の通りスキマバイトでも、雇用契約を結んでいる場合は労災保険が適用される可能性があります。
ここでは、適用されるケースと注意点を解説します。
勤務中に転んでケガをした場合
勤務中の転倒は、業務中の災害として労災認定されるケースがあります。
特に床が濡れていたり、障害物があったりするなど、事業場の管理状況に問題があれば、事業主に安全配慮義務違反が認められるでしょう。
勤務中に感染症に感染した場合
明らかにスキマバイトの勤務地で感染症にかかったと分かった場合は、業務による疾病として労災認定される可能性があります。
清掃員や事務員などのスキマバイトでは該当するケースもあるでしょう。
また、業務中に支給されたお弁当で食中毒に感染した場合も労災認定を受けることがあります。
勤務中に熱中症で倒れた場合
野外での業務中に熱中症で倒れた場合、業務上の災害として労災認定される場合があります。
ただし、この場合気温や湿度、作業内容、休憩時間などを考慮し、事業主が適切な暑さ対策を講じていたかが判断されます。十分な対策がなされていなければ、事業主に安全配慮義務違反が認められるでしょう。
通勤中にバイクで事故に遭った場合
通勤中のバイク事故は、通勤災害として労災認定される可能性があります。
ただし、合理的な通勤経路であり、業務に通常伴う経路であることが条件です。また、通勤経路を逸脱したり、私的な行為によって事故に遭ったりした場合は、対象外となる可能性が高くなります。
各事例はあくまで一般的なものであり、個別のケースによって判断が異なります。
労災申請にあたっては、労働基準監督署や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
労災保険の利用方法
労災保険を利用する際には、以下の手続きを行う必要があります。
- 事故発生の報告
仕事中や通勤中にケガをした場合、すぐに雇用主またはスキマバイトの運営会社へ報告しましょう。
報告が遅れると、労災申請がスムーズに進まない可能性があります。 - 必要書類の準備
労災保険を申請するためには、以下の書類が必要です。- 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式5号)
- 休業補償給付支給請求書(様式8号)
- 事業主の証明書(勤務実績を証明するもの)
- 医療機関での受診
労災指定医療機関で受診すれば、治療費の自己負担なく診察を受けられます。指定外の医療機関で治療を受けた場合は、一時的に自己負担し、後から請求する形となります。 - 労働基準監督署への申請
必要書類を揃えたら、事業所を管轄する労働基準監督署へ提出します。審査を経て、給付が認定されれば補償が受けられます。
スキマバイトで労災保険を利用する際の注意点
- 事業主が労災保険に未加入の場合、適用されません。
- 事故が発生した際に、すぐに報告をしないと補償の対象外になる可能性があるため、注意しましょう。
まとめ
スキマバイトにおいても、雇用関係がある場合は、労災保険の対象となるでしょう。しかし、プラットフォーム経由の働き方では適用されないケースもあります。仕事中や通勤中のケガに備えるため、労災保険の適用条件を事前に確認し、必要な手続きを把握しておくことが重要です。
万が一の事態に備えて、労災保険の仕組みをしっかり理解し、安全にスキマバイトを活用していきましょう。