残業代ってどうやって計算するの?シチュエーション別計算方法を解説!
25.06.13

「今日はちょっと残業になっちゃったな」「この前の休日出勤、ちゃんと手当はつくのかな?」そんな風に、ご自身の労働時間や残業代について気になった経験、皆さんも一度はあるのではないでしょうか。特に残業代の計算は、複雑で分かりにくいイメージがありますよね。
本記事では、そんな残業代の基本的なルールから、具体的な計算方法、そして最近増えている「スキマバイト」での残業代の扱いまで、シチュエーション別に分かりやすく解説します。
そもそも残業代とは?
労働基準法では、雇用主は従業員に対し、法律で定められた時間を超えて労働させた場合や深夜の時間帯に労働させた場合には、通常の賃金に加えて、業代を支払わなければならない、と定められています。
残業代は、正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態に関わらず、原則として全ての労働者に適用され、会社が独自の就業規則で「残業代は支払わない」と定めていたとしても、法律違反となり無効になります。
「所定労働時間」と「法定労働時間」の違い
残業代を計算する際は、「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いを理解しておかなければなりません。
- 所定労働時間
所定労働時間とは、会社と労働者の間で結ばれた雇用契約や、会社の就業規則で定められた、正規の勤務時間のことを指します。例えば、「勤務時間は9時から17時まで(休憩1時間)、実働7時間」と契約で定められていれば、「実働7時間」が所定労働時間となります。 - 法定労働時間
法定労働時間は、労働基準法で定められた、労働時間の上限のことを指します。原則として、「1日8時間、1週40時間」と定められており、会社は、原則としてこれを超えて労働者を働かせることはできません。(例外的に超える場合は、労使間で「36協定(サブロク協定)」を結ぶ必要があります)。
労働基準法で割増賃金(残業代)の支払い義務が発生するのは、基本的に「法定労働時間」を超えた労働に対してのみとなります。
例えば、所定労働時間が7時間の会社で1時間残業して合計8時間働いた場合、所定労働時間は超えていますが、法定労働時間(1日8時間)は超えていません。この場合、会社は1時間分の通常の賃金を支払う義務はありますが、法律上の「割増賃金」を支払う義務はありません。一方で、所定労働時間が8時間の会社で1時間残業して合計9時間働いた場合は、法定労働時間を1時間超えているため、超過した1時間分に対しては割増賃金(残業代)が発生することになります。
【ケース1】法定時間外労働に対する残業代の計算方法
ここでは、法定時間外労働に対する残業代の計算方法を解説します。
労働基準法では、休憩時間を除き、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならないと定められています。この法定労働時間を超えて働いた時間が「法定時間外労働」となり、残業代(割増賃金)の支払い対象となります。
【例】
- 1日の労働時間が9時間だった場合 → 1時間分が法定時間外労働
- 1週間の労働時間が45時間だった場合 → 5時間分が法定時間外労働
ただし、単に1日の労働時間が8時間を超えただけでなく、1週間の労働時間が40時間を超えた場合にも割増賃金が発生することに注意が必要です。例えば、月曜日から金曜日まで毎日8時間ずつ(計40時間)働き、さらに土曜日に3時間働いた場合、土曜日の3時間は週の法定労働時間40時間を超えた「法定時間外労働」となり、割増賃金の対象となります。日ごとだけでなく、週ごとの労働時間も意識することが大切です。
法定時間外労働の割増率は、25%(2割5分)以上
法定時間外労働に対して支払われる残業代は、通常の賃金に一定の割増率を上乗せして計算されます。労働基準法で定められた法定時間外労働の割増率は、25%(2割5分)以上であり、通常の時給に1.25を掛けた金額が、残業時間1時間あたりの単価となります。
計算式は、以下の通りです。
法定時間外労働の残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 1.25 × 法定時間外労働の時間数
計算例:時給1,200円の人が、ある日に法定労働時間を2時間超えて働いた(法定時間外労働が2時間あった)場合の残業代は、以下の通りです。
- 1,200円 (基礎賃金) × 1.25 (割増率) × 2時間 = 3,000円
通常の時給で計算すると2,400円ですが、割増されることで600円多く支払われる計算になります。自身の時給や月給から、まずは1時間あたりの基礎賃金を正確に計算し、それに1.25を掛けて残業単価を把握しておくと良いでしょう。
会社によっては、法律で定められた25%を上回る割増率(例えば30%など)を設定している場合もあるため、就業規則を確認することも大切です。
【ケース2】深夜労働に対する残業代の計算方法
ここでは、夜遅くに働いた場合の「深夜労働」に対する残業代について解説します。
深夜労働の時間帯は、夜10時から朝5時まで!
労働基準法では、午後10時から翌日の午前5時までの時間帯の勤務を「深夜労働」と定義しています。この時間帯に働いた場合は、通常の賃金に対して割増賃金を支払うことが義務付けられています。
深夜手当の割増率は「25%以上」
深夜労働に対する割増率は、法定時間外労働と同じく、通常の賃金に対して25%(2割5分)以上と定められています。
計算式は以下の通りです。
深夜労働の残業代(深夜手当) = 1時間あたりの基礎賃金 × 0.25 × 深夜労働の時間数
計算例:時給1,200円の人が、午後10時から午前0時までの2時間、深夜労働を行った場合(ただし、この日の総労働時間は8時間以内とする)、次の通り計算されます。
- 深夜手当分: 1,200円 × 0.25 × 2時間 = 600円
- 通常の賃金: 1,200円 × 2時間 = 2,400円
- 合計支払い額: 2,400円 + 600円 = 3,000円
法定時間外労働+深夜労働の場合の割増率
残業が深夜時間帯に及んだ場合は、法定時間外労働の割増率と深夜労働の割増率の両方が適用されることになります。
- 法定時間外労働の割増率: 25%以上
- 深夜労働の割増率: 25%以上
これらが合算されるため、合計で50%(5割)以上の割増率となります。
法定時間外かつ深夜労働の残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 1.50 × 該当する時間数
計算例:時給1,200円の人が、法定時間外労働として午後10時から午前0時までの2時間働いた場合、次の通り計算します。
- 1,200円 (基礎賃金) × 1.50 (割増率) × 2時間 = 3,600円
スキマバイトと残業代の関係:知っておきたいポイント
ここでは、「スキマバイト」に焦点を当て、残業代について解説します。
スキマバイトでも残業代はもらえる?
結論から述べると、スキマバイトであっても、法律上の要件を満たせば残業代を受け取る権利があります。 ただし、契約の内容によって残業代の支給有無が異なります。
- 雇用契約の場合
雇用契約とは、労働者が企業の指示・管理下で労働力を提供し、その対価として賃金を受け取る契約形態を指します。雇用契約を交わしている場合、労働基準法が適用されるため、法定労働時間を超える労働や深夜労働、休日労働に対しては、原則として残業代(割増賃金)が支払われなければなりません。 - 業務委託契約の場合
業務委託契約は、特定の業務の完成や遂行を目的として、企業から仕事の依頼を受ける契約形態を指します。働く人は企業の指揮命令下に置かれず、独立した事業者として業務を行います(例:フリーランスのデザイナー、個人事業主の配達員など)。この場合、労働基準法の労働者には該当しないため、原則として残業代という概念は適用されません。 報酬は、あらかじめ決められた業務の完了に対して支払われます。
したがって、スキマバイトで残業代が発生するかどうかを知るためには、まず自分が応募した仕事がどちらの契約形態なのかを確認する必要があります。求人情報や契約内容に「雇用契約」「アルバイト」「パート」といった記載があれば、残業代を請求できる契約である可能性が高いです。
逆に「業務委託」「請負」といった記載の場合は、原則として残業代は発生しないと考えられます。
雇用契約なら安心!ネクストレベルの残業代の扱い
多くのスキマバイト紹介サービスでは、紹介先企業とワーカーの間で「雇用契約」が結ばれます。ネクストレベルでも、紹介先の企業がワーカーを直接雇用する形をとっており、労働基準法が適用されます。
したがって、もし予定の勤務時間を超えて残業を依頼され、法定労働時間を超えることになった場合や、深夜時間帯(22時~翌5時)に勤務した場合には、法律に基づいた割増賃金(残業代・深夜手当)が支払われることになります。
具体的には、以下の通りこれまで解説してきたルールが適用されます。
- 1日8時間または週40時間を超える労働 → 時給 × 1.25 以上
- 深夜(22時~5時)の労働 → 時給 × 1.25 以上
- 法定休日の労働 → 時給 × 1.35 以上
- 法定時間外かつ深夜労働 → 時給 × 1.50 以上
- 法定休日かつ深夜労働 → 時給 × 1.60 以上
もしスキマバイト先で残業の依頼があったら?残業時の基本的な流れ
実際に勤務先で「残業してほしい」と依頼された場合、どのような手順で対応すれば良いのでしょうか。ここでは、一般的な流れを解説します。
※利用するサービスや企業によって細かなルールは異なるため、必ず利用サービスの指示に従ってください。
- 残業の可否を伝える: まず、残業が可能かどうかを明確に伝えましょう。もし予定があるなど、残業が難しい場合は、正直にその旨を伝えて問題ありません。
- 残業時間を確認する: 残業が可能であれば、「何時まで」残業するのか、具体的な終了時間を確認します。曖昧なまま作業を続けるのは避けましょう。
- 勤怠記録を正確に行う: 残業が終了したら、実際に作業が終わった正確な時間で退勤の記録(打刻など)を行います。終了予定時間ではなく、実働に基づいた時間を記録しましょう。
- 紹介元(派遣会社など)への報告: 利用しているスキマバイトサービスによっては、残業が発生した旨をサービス運営会社に報告する必要があります。勤務先だけでなく、紹介元のサービスへの連絡も忘れずに行いましょう。
- 給与明細で確認: 給与が支払われたら、残業時間分の割増賃金が正しく計算され、反映されているかを確認しましょう。
まとめ
今回は、残業代の基本的な計算方法から、法定時間外労働や深夜労働などシチュエーション別の割増率、そしてスキマバイトにおける残業代の扱いと対応方法について詳しく解説してきました。
残業代の計算は一見複雑に感じられますが、自分の働き方がどのケースに当てはまるのかを理解し、1時間あたりの基礎賃金が分かれば、おおよその残業代を計算できます。特にスキマバイトでは、「雇用契約」なのか「業務委託契約」なのかを確認することが重要です。雇用契約であれば、通常のアルバイトと同様に残業代を受け取る権利があります。万が一、残業が発生した場合は、正確な勤怠記録と必要な報告を忘れずに行いましょう。
自身の権利を正しく理解し、納得できる働き方を実現しましょう。